Studio.3 サイトウシゲジさんのアトリエ
3の2---------------(板野郡藍住町の自宅のちゃぶ台)
お昼になったので2階に上がって食事を頂くことにしました。実を言うと2階の方がサイトウさんたちの生活空間でありアトリエなのです。そして、サンドウィッチやコーヒーか並んでいるテーブルが例のちゃぶ台。このちゃぶ台で食事をし、このちゃぶ台で作品が制作されているわけです。
2階には井浦さんに負われて上がりました。負われながら「いかん、ちょっと痩せねば」と思うのですが、斎藤さん手作りのサンドウィッチをまたたくさん食べてしまいました。だって美味しいのはもちろん、食べやすいようにと小さめにカットしてくれていた心遣いが嬉しくて・・・。
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_ 食事が終わると奥の部屋から次々と大きな作品を運び出してきてくれました。サイトウさんの作品は画用紙に描かれているとは限りません。左の写真で彼が持っているのはアルミ板が入っていた箱。働いている印刷会社でこういういらなくなった段ボールを貰ってくるのだそうです。上の絵も下の絵もこの箱を開いて描いたもの。「凄く丈夫だし、こうして畳めばスペースもとらない。屏風のように見せられるのも面白いし、それに、なにしろタダだからね」他にも、拾ってきた石に描いたり板に描いたり・・・。サイトウさんはこういう廃品の再利用がとても上手です。
「1つの画面にいくつもの場面を描くことによって、それらがあたかも密接に関連し合っているように感じさせることが出来る。それが面白くて一時こういうものばかり描いていた時がありました」
サイトウさんの作品の原点は、学生時代に書いていたという『詩』にあるように思えてきました。思いのままに言葉を並べていく自由詩の世界と、思いのままに画面の中にどんどん線で描いていくサイトウさんの手法がボクの中で次第に重なっていくのを感じずにいられませんでした。
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奥の倉庫からは次から次へといろんな作品が出てきました。中には「あっ、こんなのもあった」とサイトウさん自身も忘れていた作品もあったようです。でも、それぞれに思い入れのある作品ばかりみたいで、奥から引きずり出してくるたびにその作品を描いたときの状況や今あらためて見た感想などを話してくれました。
そして当然の事ながら倉庫には奥様である斎藤志津子さんの作品もあるわけで、サイトウさんはそれらの作品を無造作に出してきます。すると説明役もバトンタッチ。この息のあったタイミング。さすがに長年連れ添ったご夫婦です。
お面を作るのも一時期のサイトウさんのスタイルでした。かなりの数を売ったと言っていましたが、それでも百枚以上残っているそうです。 倉庫から出てくるのは大作ばかりではありません。スケッチブックに殴り書きしたものやら雑誌の挿し絵の原本やら。この日見せていただいたのはほんの一部に過ぎませんから、すべての作品をきちんと整理していけば、おそらく万単位の作品が眠っているのではないかと思われます。
そんなサイトウさんに絵を描く魅力を尋ねたところ、「自分自身の再発見というか、自分の中の無意識がそのまま現れてくるのが面白い」と答えてくれたほか、「音楽も面白いと思いますよ。音楽こそが究極の抽象芸術だと思います。次生まれ変わったらぜひ音楽家になりたい」とも言っていましたし、1960年代のアメリカ音楽について幸田さんと盛り上がる場面もありました。そういえばポップアートも1960年代のアメリカが主流です。1960年代といえばサイトウさんらにとってまさに青春時代の真っ只中。その頃に聞いたアメリカ音楽・歌詞・絵画がその後のサイトウさんのスタイルに多大な影響を与え続けてきたことはまず間違いないでしょう。
そして最後に、今後どういう作品を作っていきたいか尋ねたところ、「自分が楽しめて、それを見ている人も楽しめるようなモノを作りたい」といかにもサイトウさんらしい答えが返ってきました。あくまで「自由に楽しく」がポリシーのようです。
また、「これまで何も考えずに描きたいだけ描いてきたので、少し描くのをお休みして、今ある作品をどうやって残していくか、そしてどうやって見せていくかを考えています。自分のホームページもその一つ。自分らしいモノを作りたいと準備中ですが、作りたいと思っているだけでそのイメージすら出来ていない状態です。いつになるか分りませんが、ホームページ以外でも何らかの形で出来るだけ多くの方に作品を見てもらいたい」とも言っていました。サイトウさんのホームページぜひ見てみたいです。ぜひとも早く作ってください。
★次のページにはサイトウさんのデジタル化されたほんの一部の作品を公開してあります。
サイトウさんのホームページが出来るまでの間はこれで辛抱してください。 なお、この6月の一ヶ月間、徳島駅前の「森珈琲店」で、ご夫婦の二人展を行っているそうです。こちらもぜひご覧になってみて下さい。
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