美術評論:村上哲史のギャラリー拝見 ____________

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其の五

川村泰史写真展

人工生命圏

2002年2月2日〜2月11日
ギャラリー文化座

 今回は「人工生命圏」というタイトルに惹かれ、写真展を見に行ってきました。ギャラリー拝見はジャンルを選ばないというのがポリシーなんだけど、はっきり言って写真について専門的なことはよく分りません。作者の川村さんにも会場においでいただいてお話を聞かせていただくと共に、今回もというか今回は特にカメラマンの幸田さんに助けてもらいながら、いつものように、現場で感じたことをズバズバ書かせていただきました。

 はじめ「ギャラリー文化座」という名前を聞いて、芝居小屋みたいなところかなと思いましたが、行ってみると喫茶店。しかも、コーヒーが美味いということで有名だそうです。建物も新しく、入り口には少し急めのスロープもありました。
 「ギャラリー文化座」は、徳島市国府町井戸高輪地、徳島ー鴨島線バイパス沿いにあります。夜になるとライトアップされて結構きれいらしいです。

 喫茶店のギャラリーといえば、店内のあちこちに作品が展示されていて、コーヒーを飲みながら見るような設計になっているところが多いようですが、ここは店内の一部がギャラリー専用スペース(7m×2m程度)になっていて、他の客に気を遣うことなく作品が見られます。
 この日も川村さんのお知り合いがたくさんお見えになっていました。
右側のブルージーンズに紺のジャンパーの男性が川村さんです。

 ここで川村さんのプロフィールを紹介します。

 川村泰史(ひろふみ)さんは、1961年、麻植郡川島町生まれ。1995年から写真の制作活動を始め、県内・国内はもとより海外の写真展にも多数出品、入賞されています。個展は今回が3回目で、今年5月にも「生命の美学」というタイトルの個展を開催する予定だそうです。

 作品数は机の上の小品を合わせると40点近く。「フラワーカプセル」とか「水柱花」とか、容器の中で育てた植物がほとんどで、それにライトを当てたり内側から光らせたり。植物の悲鳴と「それでも必死で生きているんだぞ」という声がステレオ放送で聞こえてくるようでした。

 川村さんのお話を聞いていると、「美を強調」とか「美の本質」とか、やたらと「美」という言葉が出てきます。そして「美の多様性を追い求めていきたい」ということでしたが、そのわりには、作品の見せ方というか会場のディスプレイにはほとんど気遣いされていないように思いました。

 この席でお昼(ホットサンドウィッチセット900円)を頂きながら、川村さんとの会話を楽しみました。というか、写真家は写真家同士、カメラの話とかフレームの話とかで弾んでいて、ボクはもっぱら聞き役。でも、知らない世界がいろいろ見えて楽しかったです。


ボクのお気に入り
「生命を照らす」

 ギャラリー全体から感じられた悲鳴。その中心にこの作品がありました。写真に写っているのは、芽を出したサツマイモだけど、その向こうには戦争に苦しむ国の子供たちの姿が見えてきました。「美」というよりも、生命の限界ギリギリまで生きようとする力強さというか、それ故の悲惨さ酷さが、赤とグリーンという相反する2色によってモノクロ写真以上に強烈に迫ってきました。

 川村さんは今回の個展の挨拶の中で、「(前略) 人間によって地球上の生命はあらゆるところで人工化された環境の中での生存を余儀なくされてきています。 (中略) それなら、人工的な空間こそが人間にとっての美を生み出す場なのかも知れない・・・。 (後略)」と書いています。そして川村さんは『人工生命圏』という彼の世界を作り上げました。彼の自宅の流し台の上という小さな世界で作られた「人工生命圏」というエリアの中で、必死で生きようとする植物。幼い頃から施設で育ったボクと、どこかで共鳴し合ったのかもしれません。

 切られても切られても芽を伸ばす芋  哲史

 また、この作品をしばらく見ていると、作品の中でもがいている芋が、昔の遊郭の女郎たちの姿にも見えてきました。妖艶でエロティックな雰囲気の中にも陰があり、その世界の中で必死で生きている女郎たち。写真の中にいろいろなモノが見える作品でした。


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