美術評論:村上哲史のギャラリー拝見 ____________

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其の10

Tシャツアート展 2-1

2002.7.19(金)〜21(日)

ヨンデンプラザ徳島2Fヨンデンギャラリー

れもん工房のメンバー + 西山きんこsan

 このギャラリー拝見も順調に回を重ねて10回目。はじめは、どれだけ続くのか不安もあったけど、あっという間だったような気もします。これもみんな取材へのご理解とご協力を頂いたアーティストの方々と、メールおよび掲示板より応援いただいたファンの方々のおかげだと思っています。スタッフを代表してお礼申しあげるとともに、今後も変わらぬご支援の程どうぞよろしくお願い致します。

 さて、今回は久々に障害者のアートを取り上げてみました。障害者、特に知的障害者の描く絵が現在活躍しているアーティストやイラストレーターの作品と比べても遜色なく素晴らしいということは、彼らの作品を目にしたアーティストの間では今や常識となっています。しかし世間ではまだまだその才能は認められておらず、特に福祉関係者やご家族の方の評価は、それ以上に低いように思えてなりません。この状態を打破する1つの方法として企画されたのが、このTシャツアート展。彼らのアートをTシャツにデザインし、販売して収入を得ることで意識を変えていこうという試みです。

 今回のギャラリー拝見は、純粋にアートを楽しむという視点だけでなく、福祉という視点と収入という視点の3つを絡めて見ていきたいと思っています。

 

 今回の会場はヨンデンギャラリー。徳島駅前寺島本町にある県内で最もメジャーなギャラリーの1つです。ボクも10年前に初めて開いた展覧会(平野聖治・村上哲史、二人展)はここを使わせていただきました。そして、それを契機に社会との関わりが劇的に広がっていった思い出の場所でもあります。

 そこでまず、今回のTシャツアート展をプロデュースされた「れもんアート工房」のアートディレクターである西山きんこさんに、なぜこの場所を選んだのか聞いてみました。
「まず今回の展覧会は、あくまで授産施設としての展覧会という位置づけで、Tシャツ商品化の足がかりとして、とにかく少しでも売り上げに繋げていきたかったんです。そのためには、一般のギャラリーで開催した方が福祉業界の人だけじゃなく、いろんな人に見ていただけると考え、交通の便利な所で、しかも経費があまりかからず販売できる所ということで、ここを選んだわけです」
 西山さんは、自身も多方面で活躍中のイラストレーター。彼女とはバジャー展以来の知り合いで、今回も楽しい話をいっぱい聞かせていただきました。

※授産施設とは、一般企業などに就職できない人のために働く場を提供している社会福祉施設。「れもんアート工房」は、知的障害者通所授産施設です。


バジャー展とは、1994年からハレルヤ・阿波の里の後援で始まった徳島県内のアーティストグループ展でした。

 会場に入ると、いつものヨンデンギャラリーとはかなり違った雰囲気になっているのに驚きました。Tシャツを洗濯物を干すように物干し竿に掛けて展示してあるのです。室内ですから風はなく、Tシャツがたなびくことはありません。ですが、そよ風が吹いているような爽やかな感じの会場になっていました。とはいうものの、この展示にはかなり苦労されたようで、「昨日夜遅くまでかかって汗びっしょりになりながらしたんじょ」とおっしゃってました。

 また、ボクらが会場に入ったときには、すでに新聞社やテレビ局などの取材合戦が行われていまた。こういう障害者の作品展にはマスコミはすぐに飛びつきます。あまりいい気はしないけれど、多くの人に見てもらうのには最高の手段。ボクもよく利用させてもらっています

 ラジオ番組に生出演中の西山さん。なんかとっても楽しそう。でも、とっても忙しそうなので、会場を一回りすることにしました。

 会場には、約30点の原画とそれを元にデザインされた100枚以上のTシャツが飾られています。それらの一部しかお見せできないのが残念ですが、しばらくの間いっしょに見ていくことにしましょう。

 実は、この日はボクも取材を受けることになっていました。『ギャラリー拝見』はどのように取材しているか、の取材です。横にいるのはNHK徳島放送局のローカルニュースのキャスターさん。いっしょに手作りの画集を見ています。どう、これ。いい感じ?

 ようやくマスコミから解放された西山さん。だいぶお疲れのご様子です。その訳は、「おんなじことを何回も説明するのに大変。特にどことも一様に『出品している障害者は何名ですか』と聞いてくる。確かに彼らには障害があるかもしれないけれど、れっきとしたクリエーターなんだから『イラストレーターと呼んでほしい』と言ってもなかなか分かってもらえない。どうしても『障害者が頑張って描いた絵』とか『障害者が頑張って作ったTシャツ』という風にまとめたがるんよねぇ」

 そうなんです。これはボクらが何かをするたびに付いて回る言葉。『障害があるのに頑張っている』。裏読みすれば『作品はどうでもいいけど頑張ってるから見てあげよう』というように聞こえてきたりもするわけです。悪気がないことは分かっています。その人が素直にそう感じ、言葉として出ていることも。ただちょっと視点が違うだけ。分かっているけど腑に落ちない。なぜならば、これらの言葉が『障害者は私たちとは違う』という意識の中から発せられた言葉だから・・・。

 それに、今回の作品展の目的の一つは、Tシャツという商品の販路拡大。だからなおさら買う側と売る側が対等でなくてはならないわけです。『障害者が作ったものだから買ってあげる』慈善的な発想では、この場では売れたとしても後が続かないわけです。健全な商行為とは、商品の良し悪しによって評価され、ニーズにあったものを買っていただく。それが当たり前なのに・・・。そんな話でいきなり盛り上がったのでした。


もしよろしければ、御感想等頂けましたらうれしく存じます。掲示板へaaaa

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