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村上哲史のアトリエ探訪     5


Studio.4  桑原健二さんのアトリエ 2−1
場所---------------(名東郡佐那河内村下嵯峨)

やったぁー、油絵だぁー。
 幸田さんとこの企画を始めて約1年。どういうわけか油絵の取材が一度もありません。「自分が油を描いてるから、無意識のうちに避けているんだろう」という噂も・・・。自分でも「そうなのかなぁ」と思い始めていたところでした。
 桑原さんのアトリエに伺おうということは、企画当初からリストにのぼっていました。でも、あまりにも気安い作家さんゆえに「いつでも行ける」と思ってしまってなかなか実現しなかったわけです。
 桑原さんとは十年来のお付き合い。彼と出会ったおかげでボクの世界は劇的に広がりました。幸田さんと出会えたのも彼を介してです。そんな恩人とも言える彼ですが、ここ二三年はずっと山にこもっている(作品を発表していない)ようで、ほとんど会っていません。そんなわけで彼のアトリエにお邪魔させてもらうことをとても楽しみにしていました。


 徳島市内から車で約30分。周りを山に囲まれた県道18号線沿いにある電気屋さん『桑原電機商会』が桑原さんの自宅兼アトリエです。山の中だから涼しいかと思いきや、標高はわずか300m少々。そのうえ周りの山が風をさえぎるようで、結構暑い所でした。

 桑原さんのご家族を紹介します。まず左から2番目が桑原さん。横で手をつないでいるのが長女の小幸ちゃん6歳。その後ろが奥様の幸代さん。そして背中に負われているのが長男の隆一君8歳です。
 それから注目すべきは写真の一番左、「アトリエ探訪」「ギャラリー拝見」通して初登場の幸田さん。今回、取材の後に三脚を使って記念撮影を行ったので一緒に入ることができました。

 今回の取材にはNHKさんが同行していました。夕方6時台のローカルニュースでボクの活動を紹介するレポートを流すためです。このときの様子は8月7日に約3分間放映されました。

 桑原さんのアトリエは元公民館。1995年、県道拡張工事のため立ち退きを迫られたとき、近所にあった公民館の建て替えが持ち上がり、タイミングよく譲り受けることができたそうです。そして1階を立体用の作業場、2階を平面用のアトリエとして使っているのですが、これがまた広い。それぞれ50平米程度というから羨ましい限りです。しかも、これでも天井が低いからといって2階の天井を自分でぶち抜いたらしい。部屋の中央に薪で焚くストーブが置いてあるので梁が黒いのはすすのせいかとおもったら自分で塗ったものだと言っていました。それに、電機屋だから配線工事はお手のもの。このアトリエ自体が桑原さんの作品と化しているようです。

 桑原さんに背負われて2階のアトリエに上がると、もうすでにたくさんの絵が並べられてありました。ここしばらく彼の油絵を見ていなかったので描いていないのかと思ったら、「ずっと描っきょーよ(描いてるよ)。油絵はワイの体質におーとーけん(合ってるから)、好きじゃ」と言って、現在進行中のものを見せ
てくれました。するとその中に見たことのある絵が・・・。「それ、前に何かに出してなかった?」と尋ねると、「うん、出しとったけどな(出していたけれど)、ええ色が作れたけら、また塗るんよ。これもこれもみんなそう。ワイら(ボクも含まれているようです)は関さんみたいに技術がないけん(ないから)、色が出来た時に塗っとかんと(塗っておかないと)今度いつ出来るか分からんけんなぁー(分からないからねぇー)。それに、出来あがり言うても上からなんぼでも(いくらでも)塗りたぁになるんよな(塗りたくなるんだよね)。ほやから(だから)、ワイの場合、作品が売れたときが完成やな」結局、置いてある絵すべてが未完成ということでした。

 だから、これらの小品でさえもムチャクチャ重い。もう何年も塗り重ねているらしいから、絵の具の厚さが1cmにもなろうとしています。《芸術は重いものだ》昔何かの番組で耳にし、ひのみねでは頻繁に使われてきたフレーズがここでも現実に起こっていました。

 桑原さんは普段は電機屋さんですが、薪ストーブの販売、メンテナンスをしているほか、薪そのものの製造販売もしているとのこと。1回の作業場には常時5台以上展示されているほか、実際に使っているのも3台あり、写真中央のはその
内の一つ。今年の2月には『徳島薪ストーブ倶楽部』なるものを発足させ事務局をしているといいます。また、日本拳法『拳剛館』佐那河内道場の事務局、徳島県からは『森の案内人』の指定を受け、山の中を見回ったりもしているそうです。それからそれから、薪を使っての料理も得意だということで、「今から焼き茄子作るけん食べていけ」と言ってくれましたが、この日は奥さんが作ってくれたお寿司でお腹いっぱいに。彼の鉄人ぶりはまた今度のお楽しみとなりました。

 とにかく、私生活でも作品の作風でも掴み所のない桑原さん。奥さん曰く、「もう少し涼しくなったら、ほんまに{木こり}のような格好をして{木こり}のような生活になるんじょ」これがもっとも正しい普段の彼の姿かもしれません。


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