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村上哲史のアトリエ探訪     5



Studio.2 三木健司さんのアトリエ
(鳴門教育大学大学院美術コース研究室)

追記■2003,夏に三木さんのサイトが出来ましたので、リンクさせて頂きました。

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 三木さんの制作分野は木彫。いくつもの木片を組み合わせて1つの作品にするのが特徴です。上の作品は今年1月に大工町のwake upgalleryで行われた「三木健司彫刻展『ー空ー』」に出品されていたもので、左が【空塔】右が【円空】というタイトルです。

 今回、三木さんのアトリエにおじゃまして、この二つの作品を組み立てるところから見せていただきました。


 鳴門教育大学のキャンパスに着いて、三木さんにまず案内されたのがここ。一見、難民キャンプのようなこの場所が大学院美術コース石彫グループの作業場だそうです。

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 そしてここが三木さんの作業スペース。「えっ、三木さんて木彫が専門ちゃうん?」とお思いでしょうが、美術コースの先生の専門が石彫だから、やってみてるんだって。今はすっかりはまってしまっているそう
です

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 左の奥にある白い石が石彫第1作目の作品。一応完成しているそうです。あまりに無造作においてあるので単なる石のかけらかと思ってしまいました。

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 この日は少し雨が降っていて、道具が錆びないように屋内に片づけられていたのですが、「せっかくだから作業しているところを見せます」と言って持ち出してきてくれました。上の写真で三木さんが手にしているのは防塵マスク。砕け散った石の粉を吸わないためのアイテムです。そのほか道具箱の中には大小2種類の金槌やノミなどが入っていました。

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 右手に金槌を持ち、カンカンやってもらっているところです。機械を使うときは、先ほどの防塵マスクと防音耳あても装着してフル装備でやっているそうですが、この時はとりあえず防塵メガネだけ。こちらにも飛んでくるといけないということで、ボクもメガネを付けさせてもらいました。

 この時期、海からの潮風が強く普通に立っていればかなり寒いのですが、こうして石を叩いていると寒さを忘れているし、しばらくすると汗が出てくるらしいです。

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 これが先ほど叩いていた作品。タイトルはまだ決まっていないようですが、4歳になる二人目の子どもの潮音ちゃんのために波の音をイメージしながら叩いているそうです。あと2ヶ月ぐらいで完成させる予定だそうですから、次の展覧会には見られるかもしれませんね。


 石彫エリアで他の学生たちの作品を見せていただいた後、三木さんが現在使っているアトリエに向かいました。鳴教大は、建てられてからそんなに経っていないこともあって建物自体も新しく、スロープもあちらこちらに見受けられました。しかし、いずれのスロープもメインの階段から離れたところにあり、ずいぶん遠回りしなければ目的地にたどり着けません。「スロープがあるからいいじゃないか」という人がいるかもしれませんが、そもそも階段が無くても済むような設計にしておけば、車椅子だけでなくお年寄りも妊婦さんも両手に重い荷物を抱えた人も通りやすいわけです。これが10年ほど前から言われ始めた「ユニバーサルデザイン」の考え方で、バリアをなくすために特別なモノを作って対応しようとする「バリアフリー」とは基本的に違うわけです。これから教育に携わる学校の先生を養成する大学であるということで、少々厳しい指摘をさせていただきました。

 少し遠回りしたけれど、何とかアトリエにたどり着けました。が、ここは三木さんだけのアトリエではありません。学生たちが共同で使っている部屋です。当然いろんな物が置いてあって、迷路のような通路を車椅子1台なんとか通ることが出来ました。

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 「個展が終わったばかりで現在製作中の作品がなくてごめん」と言いつつ、この前の個展の代表作【円空】を組み立ててくれる三木さん。ついでに作品の内側も見せてくださいました。

 作品の内側には各パーツごとに『いー1』とか『ろー3』とかのとかの記号が書かれていました。これらは大工さんがよく使っている記号で、その木片がどの部分に使うものかを示します。よく一番最初のことを「いの一番」なんて言いますが、それの由来はここから来ているそうです。

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__  これらは、作品の構想段階に描くデッサンなんて言ってましたが、すぐ上のなどはまさに設計図ですね。木の種類から大きさ木目の向きまで綿密に書かれています。作品に使う木は、構想を練ってから探すのではなく、手元にある木片をどのように使うかを考えながらデッサンしていくようです。でも、いくら綿密に構想を練って設計されていても、作品は出来上がってみないと分らないって言ってました。

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 【円空】を組み立てているところを上から見たところ。これはまさに「空飛ぶ円盤」ですね。でも、UFOなどという得体の知れないものではない。確かにそこに存在しているのだから。けれど「空(くう)」とは何もないこと。【円空】とは円くて何もないこと。これはいったい何なんだろうか。
 三木さんに「空」とは何かと尋ねたところ、「空間の空、空(そら)、空っぽのこと、生き方としての空」と答えてくれました。「空飛ぶ円盤」に見えたボクの解釈もまんざらはずれではなさそうですが、「生き方としての空」ですか。こりゃー、仏教から勉強せにゃーいけないようですねぇ。


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